INTERVIEW & NEWS

新富町の新田神社には「新田神楽」という伝統芸能がある。

新田神楽保存会 副伶人(雅楽を演奏する人)長の緒方利幸さんは、本業の農業をしながら、新田神楽を後世に残していく活動を続けている。

緒方さんに、伝統芸能を後世に伝えていくことの苦労や、今後の展望などについて伺った。

【参考】新田神楽とは?
https://koyu.media/?special=nyuta-kagura

涙を流すほど喜んでくれた先輩の姿

—緒方さんが新田神楽を始めたきっかけは何ですか?

緒方:飲み会の席で先輩に誘われたのが最初ですね。

22歳の時、新田神楽保存会に属する地元の先輩から保存会に入らないかと声を掛けられ、承諾したらしいです。

お酒を飲んでいたので、あまり覚えていないけど(笑)

—なんと! 後日お断りすることもできたのでは?

緒方:いやいや、先輩の喜んでる顔を見たら断れませんよ。

飲み会の翌日に、その先輩がいろんなところで私の入会を嬉し涙を流しながら語って回っている、という話を聞きました。

そんな歓迎のされ方をされたら……ね。

でも、実際に私自身、神楽の世界に一度飛びこんだらどっぷりハマってしまい、今では神楽一色です。

新田神楽の舞「蛇切(じゃきり)」の様子。蛇に見立てた〆縄を真剣で切っていく

子供達の思い出に残る新田神楽

—新田神楽は若い世代にも人気の伝統芸能と聞いています。

緒方:今の新田神楽保存会は子どもから大人まで、30名以上のメンバーに恵まれており、おかげさまで後継者問題とは無縁です。

若い世代がどんどん一線で活躍してくれているので、私たちも安心。

—なぜこんなに若い世代が集まってくるのですか?

緒方:私が入って間もないころはまったく人手が足りていませんでした。

危機感を感じた私たちは、平成10年頃から小学生を対象に、授業の一環として神楽を教えるようになりました。

その結果、興味を持ってくれる子どもが増え、保存会が少しずつ賑わいを取り戻してきて今に至っています。

大きくなった子たちが、新田神楽を今でも子どもの頃の思い出だといって関わってくれているのが何よりうれしいですね。

神楽を舞うまでの365日

—そうなんですね。新田神楽は今後も安泰ですね!

緒方:ただ、まったく課題がないというわけではもちろんありません。

私が保存会に入った当時、新田神楽で大役を任されていた先輩たちが次々といなくなってしまった時期がありました。

当時の先輩たちと同じ年代になった今だからこそ、もっと次の世代に伝えるべきことがあると考えています。

神楽を舞い、雅楽を演奏する。

それだけなら、今も十分継承できているという実感はあるのですが、これからは、他のことも引き継いでいく必要があると考えているのです。

—舞や演奏以外にも重要なことがあるのですか?

緒方:2月に開催される「春の大祭」を迎えるまでの準備。
これが最も重要だと考えています。

神楽で使用する道具は、太鼓以外ほとんど自分たちで手作りするので、若い子たちが作れるよう技術を継承することが今の課題。

例えば、新田神楽の中に「蛇切(じゃきり)」と呼ばれる舞があって、蛇に見立てたしめ縄が必要になります。

そのしめ縄を作るためには大量の藁が必要。

藁は、8月の稲刈りの時には確保しないといけませんし、稲を収穫するには1月から種まきをしなくてはいけません。

こうしたことまでしっかり伝えていくことが、本当の意味で新田神楽を継承するということになるのだと考えています。

まずは触れてもらう

—どのような人に神楽の魅力に触れて欲しいと思いますか?

緒方:もっともっとたくさんの人に知ってもらいたいですね。

平成31年の「春の大祭」では、こゆ財団にインターンで来ている外国人スタッフ2名も手伝いに来てくれました。

正直、最初は観光感覚なのだろうと思っていましたが、あまりにも真剣な姿に感動。
ちゃんと新田神楽に向き合ってくれているというのが、とにかくうれしかったです。

新田神楽以外にも宮崎には数多くの伝統芸能があります。
それぞれが協力し合いながら、先代が残してくれたものを多くの人に伝えていくことが、結果的に地元を知ってもらえるきっかけになるのではないかと思っています。

新田神楽をきっかけに、新富町をもっと好きになってもらいたいですね!